アルミーダのマドリガーレ、チラシの絵画について
- dolceamarotokyo
- 2022年11月3日
- 読了時間: 4分
DolceAmaroです。
日々の過ぎゆくのは本当に早くて、もう11月になってしまいました。もう「アルミーダのマドリガーレ」公演まで1ヶ月を切っています。ワタワタ。
さて今回は、チラシに使用した絵画についてのお話です。

こちら、今回の企画のチラシです。
また文字も多くて情報量多めですが、絵画が2枚使われております。
1枚目は胸のはだけたアルミーダの膝に、リナルドが肩をかけ、鏡を掲げている場面です。
そしてもう一枚は、実はこれ、上下逆なのですが(見ればわかる)、アルミーダが腕を前に出し、なにやら指を差している、いや何かを持って差しているような場面。

1枚目の絵画は、ドメニキーノこと、ドメニコ・ザンピエーリDomenico Zampieri, (1581 - 1641)の作品、現在はパリ、ルーブルにあります。
1581年の生まれ、という事で、『解放されたエルサレム』の完全版?が出版された年の生まれなのですね。
『解放〜』の中で一番有名、といいますか、おそらく一番絵画に描かれた場面です。第16歌の、17〜21連辺りの場面で、ちょうどウバルドとカルロが、アルミーダとリナルドのイチャイチャシーンを覗き見てしまう場面です。絵画というのは歌(詩)と違って、その一瞬の場面しか表現することはできませんが、この有名な覗き場面、詩の描写はもっとエロティックです。
左上の方でヒソヒソ話しているのがカルロとウバルドですね。右側にはインコ?オウム?が居ます。この直前では鳥が人の言葉をしゃべるので、この鳥がそうなのでしょう。
周りにはアモレッティが居ます。矢を射ようとしている者、なにやら紐を引っ張っている者、足元で寝てしまっているアモレッティは、松明を持っていますね。
抱き合ってキスをしているアモレッティは、これもまさに詩の描写ではアルミーダとリナルドがしていた事です。
通常の相思相愛の二人を表現するのならば、このキスシーンを描けば良いのではないか?と思いますが、実はこの鏡を掲げたシーンこそが、詩の中ではより印象的に、丁寧に書かれているのです。
リナルドが(本当は両手で)掲げる鏡にアルミーダが自分を映して見つめ、リナルドは下からそのアルミーダの瞳を見ています。リナルドは「その視線を僕に向けて、僕の瞳にこそ君の姿を映せ」なんて口走ります。
先程も書いた通り、沢山の絵画に描かれていますが、細かい描写は割と適当だったりします。そういう意味で割と詩に忠実だったのがドメニキーノの作品で、また美しくもあった為、チラシに採用となりました。
またこの場面で鏡を持っているリナルドは、その鏡で自分自身は映して見てはいない、というのも、物語として面白いなぁと思います。リナルドが自身を映し見るのはこのもう少しあと、ウバルド達が持ってきた、ダイヤの盾によってです。
さてもう一つの絵画ですが、こちらは、チェッコ・ブラーヴォCecco Bravo (1601 – 1661)の作品です。年齢的にはドメニキーノより1世代程度後の世代、と言えるのでしょうか。ただ音楽もそうですが、必ずしも史的分類と世代は一致しないので、あまり突っ込まない事にします。こちらの絵画は、生地フィレンツェのウフィツィ美術館にあります。

このおどろおどろしさ。。。
それでいて、アルミーダ自身はどこか、あどけないと言うか、洗練された大人の雰囲気というよりは、どこか幼げな雰囲気もあるように私には感じます。
この場面は、同じく第16歌の68〜70連、冥界から悪魔達を呼び寄せ、自分の住まいであった、というよりは二人の愛の巣となっていた自らの宮殿を、跡形もなく破壊させた時の場面でしょう。その後、アルミーダは空飛ぶ馬車で飛び発つのです。
ここに映るのは一部ですが、300もの悪魔を呼んだという事ですから、この黒い霧の向こう、アルミーダの後ろ側には、ものすごい数の恐ろしい悪魔達が渦巻いているのでしょう。
実は、個人的に好きな絵でもあり、またインパクトも強い為、最初に作ったチラシはこの絵だけで作っていたのでした。

ですが余りに暗く辛い場面かなぁ、と思い、上のチラシを最終稿としました。
なにしろ、同じ16歌の2場面です。特に物語の中では時間は書かれていませんが、この2場面の間は、大きくみても数時間、ひょっとすると1時間以内だったかもしれません。
この突然の表と裏を、どんなふうに載せようかな、と考えた時に、逆さまにする事を思いついたのでした。
こう見ると未だに、こっちでもよかったかなぁ〜、なんて思いますが。
当日のパンフレットには、これらの絵画以外にも挿絵として沢山の場面を載せ、またアルミーダ(とリナルド)の物語がよくわかるよう、あらすじも載せています。
是非是非ご来場頂き、音楽もパンフレットもお楽しみくださいませ!
そして、
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