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第3巻で印象的に多用される「短六度」跳躍

皆さまこんにちは、DolceAmaroです。


いよいよ第8回公演もあと10日。久々のブログ更新となりました。


今回のブログでは、今回演奏するモンテヴェルディのマドリガーレ集第3巻、その中でとても印象的に多用される「短六度」の跳躍についてです。


この時代のマドリガーレ、と言うか音楽作品の中で、6度音程がどの程度使われているのか、具に調べ上げたわけではないのはご了承頂きたい所ではありますが、やはり旋律中での6度跳躍というのは、相当に数が少ないのではないかと思われます。

あ、はじめにもう一つ断っておきますが、この6度跳躍というのは、旋律中(文章中)での跳躍、という事でして、次のフレーズの入りとの音程差が6度、というものだとこの3巻にももちろんまだあるし、他の作曲家にもあり得るだろうと思います。


さて、6度跳躍、というとすぐ思い出されるのは、知っている方も多いと思いますが、モンテヴェルディの第3巻より45年も前に出版された、Cipriano de Rore の有名な作品、こちら…


Anchor che col partireです。

2行目のio mi senta morireの mi - sen(ta)のところで、上3声部が6度跳躍しています。


これも、初めて歌った時はびっくりしましたよね。「突然どうした!?」って感じです。


このローレの短6度の跳躍は、miが必ずソルミゼーションでいうmiで歌われるので、必ずムタツィオが必要になり、そういう意味ではモンテヴェルディのものよりある意味ぶっ飛んでる気もしますが、一方では io mi senta morire と言う行の中で io から senta に向かう3度ないしは4度進行の途中に mi で一旦下降した、と言うようにも感じられ、冒頭は特に旋法もよく分からず(僕が未熟なだけですが…)フワフワとした印象もある中で、不思議に6度跳躍のぶっ飛んでる感が解消されているようにも感じます。


6度跳躍、と言って思い出されるマドリガーレは、1592年以前だと、まずはこの曲くらいなのです。みなさん他にこういうのあったよ、って言うのがあれば教えてくださいませ。




さて、それではモンテヴェルディの3巻の6度跳躍について見ていきたいと思います。

まず、その短6度の跳躍はどの曲に出てくるか。


O come è gran martire,

Vattene pur, crudel, con quella pace

Poi ch'ella in se tornò, deserto e muto (terza parte di Vattene pur crudel)

Rimanti in pace, a la dolente e bella


この4曲でした。…多用、って最初に書いたけど、そこまで多用とも言えないですかね。ただ、この6度はとても印象的に響くので、やはりこのモンテヴェルディの第3巻の特徴の一つ、として良いかと思っています。


この4曲に使われる短六度の跳躍の特徴は、


・どちらかの音に必ず臨時記号がついている(出発か到達点どちらかがmi か fa)

・上行は必ず re - fa (sopra la)、下行は必ず la - mi (=ut diesis)

つまりムタツィオしない(6音に収まってるor 半音しか飛び出ない)


です。



上記のうち3つが短六度下行です。それぞれ見てみましょう。


こちらは O come è gran martire,曲の冒頭部分の上3声です。

O, の後に必ず休符が入りますが、フレーズとしては繋がっているべき箇所です。


次はVattene pur crudelの第3部、Poich'ella in se tornòです。行ってしまったリナルドを思いつつ、1人取り残されてしまったアルミーダの悲しみのシーンで、Piango e m'assido 私はここで泣き崩れるのか、と自問する場面です。


どうしてもモンテヴェルディの「解放されたエルサレムGerusalemme liberata」の名曲というと、タンクレーディとクロリンダの戦いが挙げられますが、この曲は本当に素晴らしい。当日聴きに来られない方も、とりあえずこの曲は聴いてみて!っていう曲(の一つ)です。


そして、第3巻最後の曲 Rimanti in paceの、最後の場面です。Deh, cara anima mia あぁ愛しい私の魂の人よ、の場面。

なんだ、ムタツィオしてるじゃん、と言われるかも知れませんが…この前に♭が3つほどつく感じになるので、la-miとして良いかなと思います。

感嘆詞の後に6度下行、というのは、1曲目のO com'è gran martireと同じですね。





そしていよいよ四つ目が、短六度上行の曲です。それが、Vattene pur crudelの第1部、Vattene pur crudelです。


O come è gran martireと同じく、完全に曲の冒頭での突然の6度跳躍、3パートとも完全に同じく、re - fa sopra laの跳躍です。これは当時、初めて聴く人の度肝を抜いたことでしょう。

いや、現代人の私たちが初めて聴いても、最初に短旋律で、音の動きはその短6度跳躍のみですから、結構な驚きかと思います。え、勢い余って歌い間違えたの?ってくらいの。

これが半音下なら誰も違和感を持たないのに、これだから音楽は不思議ですね〜。


またさらに言えば、上記3つの6度跳躍は、基本に忠実にすぐに2度戻ってくるので、感覚的には5度跳躍のバリエーション、のように感じられなくもありません。ですがこの Vattene pur crudel の冒頭だけは、跳躍して途切れ、また元の音や8va下まで戻ります。アルミーダの迸る怒りが見えるようです。事実この後第2部の途中まで、アルミーダの怒りの罵りが続くのですが。あぁ、名曲。


先ほども書きましたが、Vattene pur crudelは全3部作になっています。リナルドに去られてしまうアルミーダの怒りのシーンに始まり、そこから怒り狂ったあまり2部の最後に気絶して、タッソの詩ではその間にリナルドは去ってしまうのですがそこはモンテヴェルディは曲を書いておらず、意識を取り戻し、1人取り残されたのに気づくシーンが第3部、という事です。


まさに名曲(うるさい)。そういえば先日は上野の東京G大で、「解放されたエルサレム」についてのシンポジウムがあったという事で、100名を超える方がいらしてたとのことでした。私たちDolceAmaroのメンバーも数人居ました。

今回は、それが各国でどのようにオペラや絵画の題材となったか、のようなお話だったようで、モンテヴェルディやタッソ自身はあまり話題に出なかった?ようですが、ぜひそう言うところでこう言った、未だ原作者Torquato Tassoが生きていた時代の5声マドリガーレなども紹介してもらえたらいいのにな〜、なんて思います。

DolceAmaroとしても、第3回公演で早々にGerusalemme liberata公演を打ちましたが、開催した私たちからしても良い公演だったと思うし、是非また曲目を入れ替えてやりたいと思っています。


この突然の跳躍については、6度ではないですがマントヴァの大先輩に前例があったりするのですが、だいぶ長くなったので、またそのお話は後日、または公演のパンフレットをご覧ください笑。


ではみなさま、良い夜を。





 
 
 

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