こんばんは、DolceAmaroです。
だいぶ公演も近づいてまいりました。
今回は、プログラムの中から一曲、簡単なご紹介をしようかと思います。
今回ご紹介する曲は、
Mercè grido piangendo 慈悲を、と泣きながら叫ぶ
です。
1行目からショッキングな詩ですが、まずその詩の全貌を見てみましょう。
"Mercè!" grido piangendo
Ma chi m'ascolta? Ahi lasso! io vengo meno.
Morrò dunque tacendo.
Deh, per pietade, almeno,
o del mio cor tesoro,
potessi dirti, pria ch'io mora: "Io moro".
「慈悲を!」と私は泣きながら叫ぶ、
だが、誰が耳を貸す? あぁ、意識が遠のく。
そして黙って死んでゆくのだろう。
あぁ、どうか、せめて、
私の心の大切な人よ、
君に言えたなら、死ぬ前に「私は死ぬ」と。
とても短い詩ですね。
7音節と11音節で書かれ、ABABCCの押韻、マドリガーレで歌われる典型的な詩と言えます。
文章の作りとしても、常に一人称であるのに、最初に”Mercè!”「慈悲を!」の台詞で始まり、最後に”Io moro”「私は死ぬ」の台詞で終わるのも、なんだか特徴的です。
そして、とても読みやすいのも特徴の一つと言えます。
一文一文が短く、倒置がほぼないので、読んだまま意味がとれる。その上日本人には嬉しい事に、関係詞がほぼない為、日本語に訳しても文章の順番がほぼ変える必要なく訳せ、その為曲を聴いている人も、その時どの歌詞を歌っているのかが他の曲よりずっとわかりやすいと思います。
曲としては、ディンディアよりもジェズアルドの曲で有名かもしれません。年代で言うとジェズアルドが書いた数年後にディンディアが曲を書いています。この二人の接点は、恐らく資料としては見つかっていないんだと思いますが、テキストの選択など、共通点は少なくないです。
Mercè!と言う台詞に続くGrido(叫ぶ)の一語を悲痛に叫んで曲が始まり、io vengo meno(私は気絶する)では弱々しく下行する。まさにマドリガリスティックな表現満載の、短いマドリガーレです。
ちなみに、ディンディアはこの同じ詩でモノディーの作品も書いています。今回は残念ながら演奏しませんが、こちらも名曲なのでぜひ機会があったら聴いてみて下さい。
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